インプラントは何歳が多い?年齢制限や割合について解説
インプラント治療は、失った歯の機能を回復する治療法として知られています。
しかし、「年齢制限はあるのか」「何歳から始められるのか」といった疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
本記事では、インプラント治療を受ける方の年齢層や、各年代で気をつけるべきポイントについて解説します。
また、40~60代で治療を受けるメリットや、70代以降で治療を検討する際の注意点もお伝えします。
インプラント治療をお考えの方は、年齢に関する不安を解消するための参考にしてください。
インプラント治療を受ける年齢の割合
厚生労働省の「令和4年医療施設調査」のデータによると、インプラント治療を受ける患者の年齢分布は以下のようになります。
年齢階級(歳) | インプラント装着者(%) |
25~29 | 2.6 |
30~34 | 1.3 |
45~49 | 0.7 |
50~54 | 3.2 |
55~59 | 2.9 |
60~64 | 4.5 |
65~69 | 3.6 |
70~74 | 5.9 |
75~79 | 3.9 |
80~84 | 4.9 |
85~ | 2.9 |
もっとも治療を受ける割合が高いのは70〜74歳で5.9%、次いで80〜84歳の4.9%、60〜64歳の4.5%となっています。
一方、もっとも割合が低いのは45〜49歳で0.7%です。
この統計から、おもに50代以降の中高年層で多く選択されており、とくに60代から70代にかけての年齢層で需要が高いことが分かります。
この年代で歯の喪失リスクが高まることや、治療に対する意識の高さを反映していると考えられます。
インプラントに年齢制限はある?
インプラント治療には明確な年齢制限はありませんが、安全で効果的な治療を行うために、年齢に応じた考慮すべき基準があります。
治療を行うかどうかは年齢だけでなく、全身の健康状態や骨の状態など、総合的な判断が必要となります。
- 若年層は骨の成長がほぼ終了する16歳以上から
- 高齢者は70歳を目安に要相談
それぞれ解説します。
若年層は骨の成長がほぼ終了する16歳以上から
インプラント治療を行うには、顎の骨の成長が完了していることが必須条件です。
顎の骨は成長期に大きく発達し、女性は16歳前後、男性は18歳前後でほぼ成長が完了する場合が多いでしょう。
成長が完了する前にインプラントを埋入すると、その後の骨の発達によって位置がズレ、見た目や噛み合わせに問題が生じる可能性があります。
そのため、基本的には16歳以上を目安に、レントゲン検査などで骨の成長状態を確認したうえで治療を検討します。
また、若年層の場合は治療の必要性や代替治療の可能性も、慎重に検討することが重要です。
高齢者は70歳を目安に要相談
70歳以上の方がインプラント治療を受ける場合は、手術に対する体力や治療後の回復力などを確認する必要があります。
とくに注意が必要なのは、骨粗しょう症や心臓病、糖尿病などの基礎疾患の有無と、その管理状態です。
また、手術時の出血や感染のリスク、麻酔の影響なども考慮しなければなりません。
しかし、全身の健康状態が良好で、定期的なメンテナンスに通える体力があれば、80代以降でも治療は十分可能です。
大切なのは、個々の状態に応じた慎重な判断を行うことです。
40代〜60代でインプラント治療を受けるメリット
40代~60代は、体力や骨の状態が比較的良好で、インプラント治療の効果を最大限に生かせる年齢層です。
また、社会生活がもっとも活発な時期であり、治療による生活の質の向上が期待できます。
以下では、この年齢層でインプラント治療を受けるメリットを解説します。
- 残りの歯の寿命を延ばしやすくなる
- 会話や食事を楽しめるようになる
- インプラントは寿命が長いため
- 天然歯に近い審美性
詳しく見ていきましょう。
残りの歯の寿命を延ばしやすくなる
歯を失った状態を放置すると、残っている歯に過度な負担がかかり、歯並びの乱れや新たな歯の喪失を引き起こす可能性があります。
40~60代のうちにインプラント治療を行うことで、早い段階で適切な噛み合わせを取り戻せます。
こうした予防的な治療により、残存歯への負担を減らし、将来的な歯の喪失リスクを抑えることが可能です。
また、この年代は骨の状態も比較的良好なため長期的な安定性も期待でき、残りの歯の保護という観点からも理想的な治療時期といえます。
会話や食事を楽しめるようになる
インプラントは顎の骨と直接結合するため、入れ歯のように外れる心配がありません。
そのため、硬い食べ物や粘り気のある食べ物も安心して食べられ、食事の選択肢が広がります。
また、温かい食べ物や冷たい食べ物も違和感なく味わえます。
とくに40~60代は、仕事での会食や友人との食事会など、人と食事を共にする機会が多い時期です。
インプラント治療により、こうした社交の場面でも気兼ねなく食事を楽しめ、生活の質の向上につながります。
インプラントは寿命が長いため
適切なケアと定期的なメンテナンスを行うことで、インプラントは15~20年以上の長期使用が期待できます。
40~60代で治療を受けることで、その後の人生を通じて安定した口腔環境を維持できる可能性が高くなります。
若いうちに治療を始めることで、体力があるうちにメンテナンスの習慣を確立できるのも大きなメリットです。
また、この年代は収入も安定している方が多く、計画的な治療費用の準備も可能です。
治療やメンテナンスにかかる費用を長期的な視点で考えられることも、この年代で治療を受けるメリットといえます。
天然歯に近い審美性
インプラントの人工歯は、患者の残っている歯の色や形に合わせて精密に製作されます。
とくに前歯部分では、天然歯と見分けがつかないほど自然な仕上がりを実現できます。
また、歯茎の形成にも配慮することで、より自然な見た目を作り出すことが可能です。
40~60代は、仕事や社交の場面が多い時期です。
審美性の高いインプラントにより、人前での会話や笑顔に自信を持てるようになり、社会生活の質の向上につながります。
また、この年代のうちに審美的な回復を行うことで、長期的に美しい口元を保てます。
70代以降でインプラント治療を受ける場合のリスク
インプラント治療は外科手術を伴うため、70代以降の高齢者の場合は、より慎重な検討が必要です。
以下におもなリスクを解説します。
- 全身疾患など持病がある場合が多い
- 体力の低下などで外科手術が難しい
- 感染症にかかりやすい
- 定期メンテナンスに通えるかどうか
全身状態や体力・治療後のケアなど、さまざまな観点からリスクを評価し、安全な治療が可能かを判断する必要があります。
全身疾患など持病がある場合が多い
70代以降になると、高血圧や糖尿病などの生活習慣病を抱えている方が多くなります。
とくに、血糖値のコントロールが不安定な糖尿病の場合は、傷の治りが遅くなったり、インプラントの成功率が低下したりする可能性があります。
また、骨粗しょう症の薬を服用している場合は、顎の骨の治癒に影響を与える可能性があるため、治療を見送らざるを得ないケースも。
心臓病で抗血栓薬を服用している場合も、出血のリスクが高まるため、特別な配慮が必要です。
体力の低下などで外科手術が難しい
インプラント治療は局所麻酔下で行う外科手術です。
70代以降は手術中の長時間の開口維持が難しかったり、体位保持が困難だったりすることがあります。
また、麻酔や手術に対する身体の回復力も、若い世代に比べて低下している場合が多いでしょう。
手術後の腫れや痛みに対する耐性も弱くなっているため、回復期間が長引く可能性があります。
さらに、高齢者は予想以上に手術のストレスが大きく、体調を崩すリスクも高くなります。
そのため、手術時間や治療回数を考慮した慎重な治療計画が必要です。
感染症にかかりやすい
高齢になると免疫力が低下するため、手術後の感染リスクも考慮しなければなりません。
とくにインプラント埋入直後は、傷口から細菌が入り込みやすい状態となります。
また、唾液の分泌量が減少することで、自然な口腔内の浄化作用も弱まり、細菌が繁殖しやすい環境となります。
感染症を予防するためには、手術時の徹底した衛生管理と、術後の適切な投薬管理が重要です。
また、治療前の口腔内の状態を健全に保つことも必要で、歯周病などの感染症がある場合は、事前に治療を行う必要があります。
定期メンテナンスに通えるかどうか
インプラントを長く維持するためには、3~4ヶ月ごとの定期的なメンテナンスが必要です。
しかし、加齢に伴う足腰の衰えや持病の悪化により、定期的な通院が困難になることも。
また、1人での通院が難しい場合、家族のサポートが継続的に得られるかどうかも重要な問題となります。
認知機能の低下により、メンテナンスの重要性を理解できなくなったり、予約日を忘れたりすることも考えられます。
さらに経済的な面でも、年金生活者にとって定期的なメンテナンス費用の負担は無視できない要素となるでしょう。
関連記事:老後のインプラント治療はリスクある?メリットとデメリットを徹底解説
まとめ:インプラント治療には決まった年齢制限はない
インプラント治療に厳密な年齢制限はありませんが、安全で効果的な治療のために、年齢に応じた適切な判断が必要です。
若年層では骨の成長を、高齢者では全身状態を考慮する必要があります。
とくに40~60代は体力や骨の状態が良好で、治療効果も高く、長期的なメリットが期待できる理想的な時期といえます。
ただし、どの年代であっても歯科医院での詳しい検査と診断を受け、個々の状態に応じて治療を検討することが大切です。
コラム監修者
資格
- 医療法人社団世航会 理事長・歯学博士
- ICOI 国際インプラント学会 指導医
- UCLAインプラントアソシエーション理事
- JAID 常任理事
- 日本顎咬合学会 認定医
- 日本口腔インプラント学会所属
- 日本補綴歯科学会所属
- 日本歯科医師会 会員
- 東京都歯科医師会 会員
- 厚生労働省認定研修医指導医
略歴
- 1997年 明海大学 歯学部入学
- 2003年 同大学 卒業
- 2003年 東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科 顎口腔機能再構築学系 摂食機能保存学講座 摂食機能保存学分野 博士課程 入学
- 2006年 顎咬合学会 特別新人賞
- 2007年 同大学院 修了 歯学博士所得
- 2007年 東京医科歯科大学 歯学部附属病院 医員
- 2007年 世田谷デンタルオフィス 開院
- 2008年 医療法人社団世航会 設立
- 2013年 明海大学歯学部 保存治療学分野 非常勤助教
- 2014年 明海大学歯学部 保存治療学分野 客員講師
- 2015年 昭和大学歯学部 歯科矯正学分野 兼任講師
- 2016年 明海大学歯学部 補綴学講座 客員講師
- 2020年 日本大学医学部 大学院医学総合研究科生理系 入学
©︎2023 Sekoukai.世航会
都内21院展開!土日診療・当日予約可能!