インプラントと天然歯の違いとは?5つの観点から詳細を解説
インプラントは、チタン製の人工歯根を顎の骨に埋め込み、その上に人工歯を装着する治療法です。
見た目も機能も天然歯に近く、快適な生活を取り戻せる画期的な治療法ですが、天然歯と全く同じというわけではありません。
今回は、インプラントと天然歯の違いについて詳しく解説し、抱える疑問を解消します。
それぞれのメリット・デメリットを理解したうえで、自身に合った治療方法を選択しましょう。
インプラントと天然歯の違い
インプラントと天然歯の大きな違いは、歯根膜の有無です。
歯根膜は、歯根と顎の骨の間にある薄い膜のこと。
クッションの役割を果たし、噛む力を調整したり、歯への栄養補給をおこなったりしています。
一方、インプラントには歯根膜がありません。
そのほかの違いは、以下のとおりです。
インプラント | 天然歯 | |
咀嚼力 | 天然歯に比べると噛み心地が異なる | 自然な嚙み心地 |
クッション性 | 歯根膜がなく衝撃が直接アゴに伝わる | 歯根膜によって衝撃を吸収できる |
感覚 | 温度や圧力を感じづらい | 神経を通じて温度や圧力を感じる |
栄養補給 | 栄養を吸収しない | 血管から栄養を吸収する |
あごの骨への衝撃 | 歯根膜がなく刺激が不足している | 骨密度維持に効果的 |
それぞれ詳細をまとめたので、詳しく見ていきましょう。
歯根膜の有無
天然歯は、歯根膜によって顎の骨と繋がっています。
この歯根膜は、噛む力の調節や歯への栄養補給、そして外部からの刺激を感知するなど、さまざまな役割があります。
そのほかの役割は、以下のとおりです。
- 歯への衝撃を吸収する
- 歯の感覚を伝える
一方、インプラントは、人工歯根が直接顎の骨に固定されているため、歯根膜の持つ機能を代替しなければなりません。
咀嚼力
インプラントは、顎の骨に固定されており、天然歯とほぼ同等の咀嚼力があります。
インプラント治療によって、天然歯と変わらない食生活を送れます。
しかし、インプラントは天然歯と比較して、噛み心地や感覚が異なる場合も。
これは、歯根膜がなく、食べ物の硬さや温度を感じにくいことが原因です。
とはいえ、顎に固定されているため、硬いものでも問題なく咀嚼できます。
クッション性
天然歯には、歯根膜というクッションがあり、噛む際の衝撃を吸収可能です。
一方、インプラントには歯根膜がなく、噛む際の衝撃が直接顎の骨に伝わります。
このクッション性の違いは、噛み心地や顎への負担に影響を与える可能性も。
歯根膜は、歯と顎の骨の間のクッションとして機能し、噛む際の衝撃を吸収することで、顎の骨や周囲の組織への負担を軽減しています。
感覚
天然歯は、歯根膜に存在する神経を通じて、温度や圧力などを感じます。
しかし、インプラントには神経がないため、これらの感覚を感じられません。
食べ物の温度や硬さを感じにくい点は、インプラントの注意点といえるでしょう。
温度や圧力を感じにくいと、以下の負担が生じます。
- 熱いものを知らずに口に入れてしまう
- 硬いものを通常の力と同様に噛んでインプラントに負担をかけてしまう
そのため、術後すぐは食事に気を付けましょう。
栄養補給
天然歯は、歯根膜を通じて血管から栄養を受け取っています。
一方、インプラントは人工物なので、血管からの栄養補給はありません。
天然歯は、歯根膜を通じて栄養を補給し、健康な状態を維持しています。
歯根膜には、歯に栄養を供給する血管が豊富に存在しています。
これらの血管を通じて、歯に必要な栄養素や酸素が供給され、歯の健康が維持されているのです。
あごの骨への刺激
天然歯は、噛むたびに歯根膜を通じて顎の骨に刺激を与え、骨の健康を維持しています。
しかし、インプラントには歯根膜がないため刺激が不足します。
顎の骨への刺激は、骨の健康維持に重要です。
咀嚼は、歯根膜を通じて顎の骨に刺激を与え、骨の吸収を防ぎ、骨密度を維持するのに役立っています。
インプラントはこの刺激が不足するため、長期間使用していると、顎の骨が痩せる可能性があります。
歯根膜がないことで与える影響
インプラントには歯根膜がないため、天然歯と比べていくつかの影響があります。
- 咀嚼がそのままあごの骨に伝わる
- 知覚神経がなくアゴに力がかかりやすい
- 感染リスクが高まる
日常生活のなかで、これらの違いを意識することで、インプラントが長持ちします。それぞれ見ていきましょう。
咀嚼がそのままあごの骨に伝わる
インプラントは、噛む際の衝撃が直接顎の骨に伝わります。
そのため、硬いものを噛む際には注意が必要です。
天然歯であれば、歯根膜がクッションの役割を果たし、顎の骨への負担を軽減してくれます。
しかし、インプラントの場合は、このクッションがありません。
そのため、硬いものを強く噛むと、インプラントや顎の骨に負担を与えてしまう可能性があります。
顎の骨が弱い方や、インプラントを埋め込んだばかりの方は、硬いものを噛む際には注意しなければなりません。
知覚神経がなくアゴに力がかかりやすい
インプラントには知覚神経がなく、噛みしめすぎに気づきにくいため、顎に過度な力がかかりやすくなります。
天然歯であれば、歯根膜に存在する知覚神経が噛む力の強さを感知し、噛みしめすぎを防いでいます。
しかし、インプラントには知覚神経がありません。
そのため、無意識のうちに強く噛みしめてしまい、顎の関節や筋肉に負担をかけてしまう可能性があります。
噛みしめすぎは、顎関節症や頭痛、肩こりなどの原因にもなり、注意が必要です。
感染リスクが高まる
インプラント周囲は、歯周病菌に感染しやすく、注意しなければなりません。
適切なケアをおこなわないと、インプラント周囲炎などを発症する可能性があります。
インプラント周囲炎は、インプラント周囲の歯肉や骨に炎症が起こる病気で、重症化するとインプラントが脱落してしまうこともあります。
予防するためには、以下のケアをおこないましょう。
- 毎日の歯磨き
- 歯間ブラシ
- デンタルフロス
このように、インプラント周囲を清潔に保つことが重要です。
また、定期的に歯科医院でメンテナンスを受けることも大切です。
インプラントはどういう治療?
インプラント治療とは、歯を失った部分の顎の骨に、チタン製の人工歯根を埋め込み、その上に人工歯を装着する治療法です。
天然歯のように咀嚼でき、見た目も自然で美しい歯並びを取り戻せることから、近年注目を集めています。
歯を失った場合、入れ歯やブリッジといった治療法もありますが、インプラントはこれらと比較してメリットが多いです。
入れ歯のように取り外す必要がなく、ブリッジのように健康な歯を削る必要もありません。
また、顎の骨に直接固定されるため、安定感が高く自分の歯と同様に咀嚼できます。
インプラントを長持ちさせて感染を予防する方法
インプラントは、適切なケアを行うことで、長持ちさせられます。
- 歯科で定期的にメンテナンスする
- セルフケアをする
- 嚙み合わせを調整してアゴへの負担を減らす
- インプラント手術に定評がある病院を選ぶ
毎日のセルフケアや、歯科医院での定期的なメンテナンスは、欠かさずおこないましょう。
歯科で定期的にメンテナンスする
インプラントは、術後のケアが非常に重要です。
場合によっては痛みを感じたり、嚙み合わせがずれたりします。
しかし、定期的にメンテナンスをすることで、これらを予防できます。
メンテナンスの例は、以下のとおりです。
- 歯垢や史跡の除去
- 嚙み合わせの調整
このようなメンテナンスをおこない、インプラント周囲炎の予防に努めます。
セルフケアをする
普段の歯磨きや歯間ブラシ、デンタルフロスなどを使い、インプラント周囲を清潔に保ちましょう。
インプラント周囲は、歯周病菌が繁殖しやすく、丁寧なブラッシングが重要です。
歯ブラシだけでなく、歯間ブラシやデンタルフロスを併用すると、より効果的に歯垢を除去できます。
清潔に保つことで、感染症予防にもつながるのでおすすめです。
嚙み合わせを調整してアゴへの負担を減らす
噛み合わせが悪いと、特定のインプラントに過度な力がかかり、破損や脱落の原因になります。
また、顎の関節や筋肉にも負担がかかり、顎関節症などを引き起こす可能性もあります。
そのため、歯科医院で定期的に噛み合わせのチェックを受け、必要があれば調整してもらいましょう。
インプラント手術に定評がある病院を選ぶ
インプラント手術は、高度な技術と経験が必要です。
信頼できる歯科医院を選び、手術を受けましょう。
インプラント手術の実績が豊富で、アフターケアも徹底している歯科医院を選ぶことが大切です。
また、最新の設備や技術を導入しているかどうかも確認しておきましょう。
まとめ
インプラントは、天然歯と比べていくつかの違いがありますが、適切なケアをおこなうことで長持ちします。
インプラント治療を検討されている方は、歯科医師に相談し、自分の状況に合った治療法を選択しましょう。
そして、インプラント治療を受けた後は、毎日のセルフケアと定期的なメンテナンスを十分におこなうことが大切です。
コラム監修者
資格
- 医療法人社団世航会 理事長・歯学博士
- ICOI 国際インプラント学会 指導医
- UCLAインプラントアソシエーション理事
- JAID 常任理事
- 日本顎咬合学会 認定医
- 日本口腔インプラント学会所属
- 日本補綴歯科学会所属
- 日本歯科医師会 会員
- 東京都歯科医師会 会員
- 厚生労働省認定研修医指導医
略歴
- 1997年 明海大学 歯学部入学
- 2003年 同大学 卒業
- 2003年 東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科 顎口腔機能再構築学系 摂食機能保存学講座 摂食機能保存学分野 博士課程 入学
- 2006年 顎咬合学会 特別新人賞
- 2007年 同大学院 修了 歯学博士所得
- 2007年 東京医科歯科大学 歯学部附属病院 医員
- 2007年 世田谷デンタルオフィス 開院
- 2008年 医療法人社団世航会 設立
- 2013年 明海大学歯学部 保存治療学分野 非常勤助教
- 2014年 明海大学歯学部 保存治療学分野 客員講師
- 2015年 昭和大学歯学部 歯科矯正学分野 兼任講師
- 2016年 明海大学歯学部 補綴学講座 客員講師
- 2020年 日本大学医学部 大学院医学総合研究科生理系 入学
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